坂本のブログ

僕の備忘録です

ラブライブ!サンシャイン!!2期3話の農業用モノレールについての考察

 こんにちは、坂本です。今回はラブライブ!サンシャイン!!2期3話に出てきた農業用モノレールについての考察を書いていこうと思う。2期感想の方へ書こうと思ったのが、長くなりそうだったので別記事にした。感想の本筋と関係ないため。

 

 

 

 

 

 

1.農業用モノレール(モノラック)について

 そもそもAqoursが乗っていたあの乗り物は農業用モノレールというものだ。不整地での資材輸送、斜面部での収穫物の運搬、人員輸送(主に山岳部の工事人員)に使われている。戦後1952年に急傾斜地帯農業振興臨時措置法が成立し、傾斜地や段々畑が増え、その農業振興政策の過程での機器開発の中で生まれ、現在でも活躍してるという歴史がある。

 モノレールとの違いはレール下部にラックという波状版がついているレールの上を走るところである。レールの上を走るというのはモノレールと変わりはないが、ラックピニオンを利用して急勾配にも対応しているという点が特徴である。

 

https://www.nikkari.co.jp/product/monorail モノレール現場写真集(5MB) より引用

 

 余談だが一般的には"モノラック"と呼称されるが、モノラックは主要メーカーである株式会社ニッカリの商品名である。なお本記事では一般的に浸透しているモノラックの呼称で記事を進めていこうと思う。

 

 

 

2.作中のモノラックについて

 さてモノラックの概要説明が終わったところで作中のモノラックについて考察していこうと思う。なお今回はモノラックのパイオニアであり、国内シェア1位のニッカリの商品に絞ってみていこうと思う。私の体感ではあるが、見かけるモノラックの8,9割はニッカリのモノラックである。またモノラックの耐用年数を考えると過去のカタログからも参照するべきだが、作中での導入時期が分からない、過去のカタログが見つからなかったなどの点から執筆時点(2024年7月22日)でのニッカリのHPに掲載されている商品情報、製品カタログから参照していく。

 時間のある方はニッカリの商品情報、カタログに目を通してほしい。

 

 

 作中のモノラックは運転席付き牽引車、2連結台車、レール単線の構成と見受けられる。レールが単線であるということは、サブレールが存在する1000kg、3000kg牽引車はまず除外される。

 通常の運搬仕様から考えると、1箱20Kgのコンテナを10箱積載または20箱積載するので200kg、400kg積載となる。なので200kg~500kg牽引車が選定候補となる。

 乗車重量から考えると女子高生(16~18歳)の平均体重は50.4kg、9人なので453.6kgとなる。そのため200kg、300kg牽引車は除外される。

 

 

コンテナ、満杯時1箱20kg



 よって500kg牽引車が作中使用されているモデルと考えられる。が、カタログを見て驚愕した。

 

https://www.nikkari.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/500kg.pdf 500kgカタログより引用

https://www.nikkari.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/500kg.pdf 500kg より引用


 台車の構成に4人乗り台車2連結となっているが、牽引車に運転席がない。このままでは誰か1人走ることになってしまう。1人乗り乗用台車もあったが、他のカタログの台車構成もも見たところ牽引車も含めて3連結までの構成しかなかった。おそらく安全上の問題からなのだろう。もしかしたら4連結以上できるのかもしれないが、メーカーに確認したわけではないので今回は3連結までで考えていこうと思う。

 これで作中の構成でのモノラックの再現をすることは潰えた。ここからは9人が乗車することを第一とし、可能な限り作中再現していく。

 1000kg牽引車のカタログに運転用台車+9人乗り乗用台車の構成を見つけた。

 

https://www.nikkari.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/1000kg.pdf 1000kgカタログより引用


 作中とは単線ではなくサブレールがある点、牽引車ではなく運転用台車が単独で分かれている点、乗用台車が2連結ではなく1台で完結している点などの相違点がある。だが運転席がある点、9人乗用台車に乗車している点が一致しているため今回はこの構成で確定することにする。

 以降の考察では上記の構成で話を進めていこうと思う。

 

 

 

3.作中のルートについて

 作中ではラブライブ予選と学校説明会がブッキングした際、両方の予定を間に合わせるというものであった。

 ラブライブ予選会場の狩野ドームから学校説明会のある裏女(長井崎小中一貫学校)の正規ルートは以下の通りである。

 

狩野ドームから裏女までの正規ルート

 

 皆さんはこれを見てどう思っただろうか?私は近いのでは?と感じた。大仁近辺が少し混みそうだと思ったが、30分かからないのであれば別に普通に車で行けば飯野家はないかと思った。これで時間間に合わないのであればリスケなどした方がいいのではないのだろうか?

 次に実際Aqoursが走ったルートである。実際に道が開示されているわけでもなく、私有地にも立ち入ってるのであくまで直線距離だが。ただ道中に出てくる虹の郷も直線距離上に入っていますし大きくは違ってないかと思う。このルートであると10.36km、約10kmである。

 

狩野ドームから裏女までの直線ルート

 

 ということでこちらがAqoursが走ったであろうルートだ。距離にして約7km差ほど。

山間部といえ舗装されている、時間に間に合わせるために急いでいるということも考慮して時速10km=分速約167mと仮定する。

 単純に全経路徒歩と仮定すると、約10kmを時速10kmで走っているわけなので、1時間となる。山岳部ではあるが時間の制約があるため気持ち早めに徒歩時速を見積もっているとはいえ、到底間に合うような移動時間ではない。となると重要になってくるのはモノラックの存在である。
 作中狩野ドームから虹の郷までは全編でないにしろ、走っている描写があるため徒歩と仮定する。ということは件のモノラックが出てくるのはその後ということになる。グーグルマップで確認したところ、堀切北部から重須にかけてみかん畑が確認できた。

 

オレンジ色で囲んだ範囲がみかん畑



 ところどころ畑同士が離れている部分もあるが、おそらく所有者の違いや開墾の時期や経緯によるものだろう。農業従事者の高齢化によって規模の縮小や廃業によって作地面積が削減しているのかもしれない。現に規模を縮小して続けている農業従事者の方を私は知っている。かつては山一面にみかん畑が広がっていたのかもしれない。

 Aqoursによって内浦、西浦地区の少子化問題は多くの方に周知されたと思うが、高齢化による地場産業の衰退についても考えないといけないのかもしれない。

 話が少し逸れたがルート仮定の話に戻ろうと思う。ところどころ畑同士が離れている部分があるという話をしたが今回は重須山頂部から重須集落部まで畑が続いている、またはモノラックのレールが続いているものとする。

 上記地図に示してある通り重須山頂部から重須集落部まで直線距離にして約1.5kmである。2章で特定した構成(M-1000MSB+OP-1-1000+OP-9-1000)での走行速度は分速30mである。(1000kgカタログより。下りの為1速。)

 1500m÷分速50mで30分。この時点で普通に車で向かった方が早いが、それを言ってしまうと記事が終わってしまうため最後まで考察していこうと思う。

 ルート全体で10km。モノラック部が1.5kmで30分。残りの8.5kmを全て徒歩と考えると、8500m÷分速167m=50.998・・・・≒51分となる。30分+51分=81分、全体の移動でかかる時間は1時間21分となる。

 

 

 

4.最後に

 ということで車の移動が約30分(多めに見積もって)、徒歩+モノラックでの移動が1時間21分(概算)という結果となった。もちろんルートやモノラック部の距離などを仮定しての概算ではあるが、現実的なショートカットは難しいという結論に至った。

 ラブライブサンシャインがモデルに忠実に作っているとはいえ、全て完全再現することは難しいのかもしれない。また今回に関しては再現しようとすると私有地への立ち入りなどが問題になってくるおそれもあり、意図的に詳細なルートを明かしていなかったり、再現していない部分もあるのではないだろうか。

 

 ということでいかがだっただろうか。私にしては真面目な記事であったと思う。沼津、伊豆の地理に少々覚えがあり、モノラックを扱ったことがあるため書き始めた記事である。が、よく考えてみるとここまで真剣に考察記事を書いたのは初めてであろう。今後も機会があったら書いていきたいと思う。

 

 ここまで読んでいただきありがとうございました。指摘点、訂正部分などがあればご指摘いただければと思います。

 

 

 

 以下に関してはラブライブサンシャインとは関係のない、完全にモノラックに焦点をものとなっている。読んでも読まなくても特に問題はない。

 

 

 

EX.作中とのモノラックの仕様相違点について

・台車

 作中では一部メンバーは横2列で乗車しているが、カタログの4人乗り台車は縦1列である。この点が相違がある。そもそも台車に直に座っており安全柵やチェーンがない時点で荷物台車に乗車しているのではないか。台車まで映っているカットが少なく断定こそできないものの、直に座っている、安全柵やチェーンがないことから荷物台車に乗っているということも考えられる。あくまで可能性レベルの過程ではあるが。元々傾斜地での資材、収穫物の運搬を想定して開発されており人が乗車することは想定されていなかった。が、荷物台車への乗車で事故が多発し乗用台車が登場した経緯を鑑みると、あくまで作中の演出ということなのだろう。

 

・ブレーキ

 果南が壊したブレーキレバーだが作中では自転車のようなブレーキワイヤーを使用した方式となっていたが、そもそもブレーキがない。一定時速での走行になるためブレーキ(レバー)は必要なく、走行・停止のみシフトレバー方式となっている。

 

https://www.nikkari.co.jp/wp-content/uploads/2024/03/E2018-2_M-1000MSB.pdf より引用



 では何故走行・停止のみのレバーになっているのだろうか。これは操作上、安全上の観点からシフトレバー方式になっていると思われる。基本的に走行時の変速はないため変速ギアの必要はない。一部モデルには変速レバーがついているが、停止時にしか使用しない且つ操作ミス防止の為別レバーとなっている。ブレーキワイヤーを使用すると走行している最中に停車しようとすると「ブレーキをかける→ギアを入れる」のように2段階の操作を要求されるが、走行・停車のみのレバーであればレバーを引く、押すだけで停車できる。このように操作を減らすことで誤操作による事故を減らすことができるのではないか。また緊急時にとりあえずレバーを引けば停車にギアが入るため安全対策としても機能している。

 レバー操作部の反対側(軸の逆側)までレバーを伸ばすことでストップレバーの機能を持たせている。具体的にはレールの端部にストッパーとして棒を設置しておき、ストッパーにストップレバーが引っ掛かり物理的にレバーが引かれる仕組みとなっている。荷物の積み下ろし場所への自動停車、脱線事故の予防に一役買っている。

 今回作中でワイヤーブレーキ方式であったのは、身近にあるブレーキのイメージ、ブレーキが壊れたという表現の分かりやすさの為ではないだろうか。

 

・坂道滑走

 上記に付随することかもしれないが、ブレーキを壊した直後坂道を自由滑走またはエンジンでの加速で爆速で下っていくシーンがあるがこれは現実では絶対にありえないことである。もし起こりうるとすれば単純に故障しておりレールをスライドするだけの装置になっているのだろう。

 話を戻すが仮にブレーキがかからなかったとしても降板ブレーキや減速機があるためスピードが出ることはないだろう。また降板ブレーキや駐停車ブレーキが故障したとしても規定速度の2倍以上の速度が出ると、緊急ブレーキが自動で作動し停止する機構が備わっている。またラックピニオンを使用している為、ローラー式と比べ噛み合いがある分スピードは出づらいだろう。

 作中ではワイヤーブレーキ方式使用している為ブレーキによって速度、減速を操作していると考えると、ブレーキが壊れた=ブレーキをかけることができないので傾斜部での自由滑走もしくはエンジンでの加速が考えられるので、可能性としては考えられる話である。その場合は緊急ブレーキなどの安全装置がないことになるが。

 

 

 

 

 

 

 

参考サイト

商品情報(モノレール) | モノラックと園芸農業機械のニッカリ

ダウンロード(モノレール) | モノラックと園芸農業機械のニッカリ

モノレール - 産業用モノレール - わかりやすく解説 Weblio辞書

みかん畑の機械化の話 その2 モノラック

国民健康・栄養調査14 身長・体重の平均値及び標準偏差 - 年齢階級,身長・体重別,人数,平均値,標準偏差 - 男性・女性,1歳以上〔体重は妊婦除外〕 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口